サービス利用規約の読解促進を目指した表示手法の比較検討

 

 

オンラインでサービスを初めて利用するとき,サービスを提供する企業が提示する利用規約にユーザは同意しなければならない.利用規約に同意するボタンをクリックする行為は契約を締結する行為と同等の効果を持つ.しかし,利用規約を読んで正しく理解した上で同意または拒否を選択するユーザは極めて少なく,多くのユーザが内容をほとんど読まずに同意を選択している.ユーザに利用規約を読解してもらうために企業が取りうる1つの方法として,利用規約のユーザへの見せ方(表示手法)を工夫することが挙げられる.例えば,利用規約を表示するページのスタイリングを工夫したり,利用規約の重要な部分について別途概要などの補助的なコンテンツを追加したりすることが挙げられる.しかし,表示手法の工夫の方法は企業によって統一されておらず,それぞれの表示手法の実際の効果は不明である.そこで本研究では,様々な利用規約の表示手法にユーザの利用規約の読解を促進する効果があるかを定量的に調べることを目的とする.そのため,架空のSNSのウェブサイトと利用規約を独自に用意し,クラウドソーシングを活用したユーザ実験を通じて複数の利用規約の表示手法を比較評価した.結果,利用規約の表示手法は,ユーザの利用規約の理解度とほとんど関係ないことがわかった.また,利用規約には一般的には見られない内容が含まれていても,ユーザがそれに気づかない可能性が高いという知見も得られた.本論文では,実施した実験の概要,結果,および考察の報告を行う.

竹ノ内 朝陽,矢谷 浩司.サービス利用規約の読解促進を目指した表示手法の比較検討.FIT 2020,第3分冊,57 – 64.(paper)