ファッション活動は社会生活において不可欠であり,個人のアイデンティティの表現でもある.し かし,ファッション活動は本質的に視覚を通して行われるため,視覚障がいのある人にとっては難易度が高い.情報技術は視覚が不自由なユーザのファッション活動を支えることができるが,既存研究では彼らの 必要としている情報や課題の全体像を十分に分析できていなかった.本研究は,視覚が不自由なユーザへ のインタビュー調査とその分析により,ファッションにおける視覚が不自由なユーザの問題点とその構造 に対する理解を深めることを目的とする.事前調査では視覚障がいのある 30 人の成人(全盲 18 人,弱視 12 人,男性 11 人,女性 19 人)の衣服のファッション活動に関するインタビューを通じて,定性的な調査を行った.本調査では衣料品のファッション活動が 4 つの段階,すなわち,購入前,店舗でのショッピング, 衣服管理,コーディネートから構成されていることを明らかにした.また,ファッション情報の収集,購 入する服の詳細情報の取得,着る服の状態の把握,コーディネートのフィードバックの取得といった,各段階における大きな課題を特定したうえで,ファッションに関するアクセシビリティを技術的に支援できる研究分野について論じた.
嶋田 紅緒,矢谷 浩司.「視覚が不自由なユーザのファッション活動に関する定性的調査」情報処理学会UBI研究会,2019年3月.優秀論文賞受賞.(paper)