光電効果を応用した実験手法の一つに光電子分光法 (photoemission spectroscopy) がある.Xなどの高エネルギーの電磁波を試料に照射した際に試料表面から出てきた電子(光電子)を解析することで物質表面や内部の電子状態などを調べる光電子分光は,今や物質科学,生命科学,医学,ナノテクノロジーなど様々な分野で欠かせない実験手法となっている.光電子分光では光源として,物質由来の特性 X 線の他に,放射光と呼ばれる連続的な電磁波(光)を使用することがある.高輝度な放射光光源を用いることで,計測精度が飛躍的に向上し,計測時間の短縮も見込める.しかし,放射光を用いた光電子分光では,放射光施設において,限られた利用時間内に素早く正確な計測と解析をミスなく遂行する必要があり,特に施設や装置,実験手法に不慣れなユーザーには負担が大きい.この課題を解決する計測・分析支援ツールを開発する
ために,筆者らはまず非熟練ユーザーと専門家合計7にインタビューを行った.本稿ではその結果を報告し,今後の展望について述べる.

 

桝田 拓磨,小林 正起,矢谷 浩司.非熟練ユーザーの光電子分光計測・分析支援に向けた質的調査.電子情報通信学会総合大会,2022年3月.(paper)