購買者が入店前に購入品目を決定しなかったにもかかわらず,店内において購買を決定する購買行動を非計画購買と呼ぶ.実店舗においてこの非計画購買を理解することは販促活動において非常に重要視されている.その理由の一つとして,日本のコンビニエンスストアにおいて売り上げの70%は非計画購買によって成り立っているという調査がある.既存の研究ではカメラやセンサーを用いて実店舗における購買行動を調査しているが,非計画購買の特徴を説明づけるような行動特徴量の調査は今まで行われてこなかった.そこで本研究ではセンサーを備えたスマート商品棚を用いて,非計画購買に特有の行動特徴量に関する定量的な調査を行なった.研究室に店舗を模した環境を用意して実験を行なった結果,棚前での滞在時間や商品に手を伸ばした回数,棚からの距離が計画購買と比べて有意な差を示すことがわかった.また,これらの特徴量にBoruta と呼ばれる特徴量抽出手法とサポートベクターマシンを用いることで購買行動の分類を試みた結果,precision = 0.76,recall = 0.81 であった.最後にこれらの結果に対する議論および今後の展望について述べる.
杉山 悠司,刀根 亮太,今村 修一郎,矢谷 浩司.「商品棚前における非計画購買者の行動特徴量の検討」情報処理学会第62回UBI研究会,2019年6月.(paper)