日常生活につきまとうストレスに対して適切な対処法を見つけ上手くつきあう必要があるが、個人によって何をストレスに感じ、そのストレスにどのような対処が適しているのかは異なる。そこで本研究ではストレスの内容やユーザの心理状態、個人の性格に応じてユーザが求めるストレス対処法を提案するシステムを構成することを見据えて、これらの要素がストレス対処法への好みにどのように影響するのかを調査する。ストレスの内容やユーザの心理状態を分析するために筆記開示という心理療法を通じて言語化してもらい、ストレス対処法のメタファーとなるような視覚的フィードバックを4種類のうちから1つを選んで使用してもらうことで選好傾向を分析した。ユーザ実験では、クラウドソーシングサイトから募集した20代後半から50代後半までの男女29人を対象に4 週間の間毎日実験を行なってもらい、442の筆記開示のサンプルを収集した。定量分析の結果、ストレスの大きさやストレスによる怒り・悲しみ・恐怖感、そしてストレスの原因が自分自身にあるかどうかといったことが視覚的フィードバックへの選好に影響を与えることがわかった。この結果を利用することでどのようなストレスを抱えているか、それによってどのような感情を抱いているかを考慮してユーザが使いたいと感じるストレス対処法を的確に提案するシステムを作ることができると考えられる。しかし筆記開示の文面自体と選ばれた視覚的フィードバックの間に特徴的な関係性は見出せなかったため、筆記開示の文面のみから予測を行うためには書き手にストレスの種類、感情について言及するよう促すことが重要である。
中野 博貴,乘濵 駿平,耿 世嫻,矢谷 浩司.2024.筆記開示後の視覚フィードバックデザインの選好に関する調査.DICOMO 2024.(paper)