第二言語学習で最も一般的な語彙の誤用問題の一つは, 類義語の使用に関するものである. 不適切な語彙の使用は, 誤解を招いたり, 社会的に不利な結果を引き起こしたりする可能性があるため, 類義語間の微妙な違いを学習することは重要である. 先行研究において, AI やLLM による介入方法を工夫することで, ユーザの思考や理解度に影響を与えることができると示されているが, これらの知見を基に偶発的な語彙学習のタスクを設計した場合の, 学習効果や認知負荷の十分な調査が行われていない. そこで本研究では, これらのAI やLLM による介入方法に関する知見を基に, 文章読解中に登場する単語とその類義語の意味の違いに関して, 提示された説明文を理解する「説明モード」のタスクと, 質問に対して回答する「質問モード」のタスクの2種類を設計した. これらのタスクについて, それぞれの学習効果と認知負荷の長期的な変化を, 30日間の実験を通して被 験者内比較で評価した. また, 事後インタビューを通じた定性的な調査も実施した. 結果として,「質問モード」の方が学習効果が高いとことが示された. また, 両方のモードにおいて, 一 部の認知負荷指標において, 長期間の繰り返し学習による負荷の低下が見られた.

 

澤野令,香取浩紀,矢谷浩司.文章読解中における類義語学習を目的とした質問または説明ベースのマイクロタスクの効果検証,情報処理学会全国大会.2025年3月.(paper)